明神岳 南西稜を縦走

明神岳 南西稜を縦走

ようやく明神岳へ

上高地から明神へ向かう際、いつも鋭い明神岳を眺めながら計画しては中止になり、なかなか登る機会がなかったのですが、2022年の夏に明神岳南西尾根を登って、主稜から前穂に縦走してきました。

登山地図に記載されていない、いわゆるバリエーションルートです。

前日夜発で京都から平湯まで高速バスで移動、平湯から上高地に入ります。
金曜日かつ天気予報もあまり良い予報ではなかったので、人が少ないかな、と思っていましたがバスターミナルは大勢のひとで溢れていました。

atompacks
今回デビューのザック atompacks

河童橋から岳沢登山道へ

河童橋からこれから向かう岳沢方面。前日は雨が降ったようで穂高の山々は靄がかかっている。これは藪漕ぎでパンツが濡れるな…

明神岳五峰はピークが雲に覆われている

明神岳Ⅴ峰の南西尾根に取り付くには、岳沢小屋へ向かう登山道の途中にある「NO.7」の看板から
尾根方向へ入る。前までは進入禁止のようにトラロープが張られていたように思うがロープは撤去されていた。

ここから分け入る、トラロープはなし

いざ藪漕ぎのバリルートへ

ここからはバリエーションルートだが、踏み跡があるのであまり気にせず歩くことができます。
すぐに急な登りになり、この日は濡れた木の根がすごく滑るので気を使う。
しばらくは熊笹の藪が続き、ここでパンツが笹の葉でビショ濡れになる。天気は快方なのですぐに乾くかと思ってレインウェアは着ずに登る。なんたって暑すぎる…。

つるつるの地面や藪と戦い、歩きにくい踏み跡を重荷に耐えながらひたすら登っていく。
水場が一切ないので、4Lの水を歩荷してザックはおそらくロープや登攀具を含めて15kg程度にはなっていると思われる。

徐々に標高を上げ眺望が得られるぐらいになったところで痩せた岩尾根が出現。
フィックスロープが張ってあるが、登りはホールド、スタンスともに豊富なので普通に登れる。下りはロープがないと痩せ尾根なだけに怖い気がする。
どちらかというと重荷がバランスを崩す要因になるので軽量化も考えたほうが良さそう。

標高が2,400mを超えるあたりから森林限界となり周囲の木々はなくなり、ハイマツが多くなってくる。濡れたハイマツを押し分けながら登っていくと、岩場が目立つようになりⅤ峰台地に到着した。台地からは上高地方面が見渡せ、ここが幕営地となっているのも納得。
ここでテントを張りたい(疲れているので)気になったが、まだ午前中なので予定通り主峰下のテン場まで向かうことを決意。

Ⅴ峰のピッケルに会えた

そこからⅤ峰までは踏み跡をたどりながらザレた斜面を登っていく。ほどなくⅤ峰のピーク(2,726m)へ。そこには今回のお目当だったピッケルが。
そうそう、これが見たかったんです(笑)

五峰ピークにあるピッケル。簡単に抜けた(汗)

しばしここで休憩。コーヒーを淹れてほっこりする。この日は風もなく山頂も穏やかだった。
これでガスがなければ最高なのに。いや、ガスがなければ暑くてたまらないのかもしれない。

次はⅣ峰なんですが、Ⅴ峰からの下降路を間違ってしまい、Ⅴ峰台地の手前まで降りてしまう。
Ⅳ峰は巻き道もある、とのことでピークを踏まないでも良いかと少し下がったのが間違いで、結局Ⅴ峰ピークから降りる場所を間違えていた。また登り返してせっかく休憩で取り戻した体力をかなり消費してしまう。稜線沿いに歩けば良いだけだったのだが、巻道でラクをしようとしたのが間違いだった…、結局巻かずに歩き、Ⅳ峰らしい細長いピークに辿り着く。

時間をロスしたな…と思っていたら、雷鳥の鳴き声がして振り返るとガスの中に雷鳥がいた。
近づく気力もなく、離れた場所から撮ってみたが、やはりぼんやりしていた。
まあ、雷鳥にも会えたことだし、気を取り直して歩みを進める。

急に飛んできた雷鳥

Ⅳ峰のピークからⅢ峰は近く、目の前に存在感のあるⅢ峰が聳えていた。
ガスの中、単独で登攀する気が起きず、ここは巻くことにした。

Ⅲ峰を南面から 写真では分かりづらいがかなり大きい岩峰

Ⅲ峰の巻き道が核心?

巻き道は岳沢側をトラバースするが、足元が崩れるガレた岩とハイマツが続き、大きい岩も安定していないので、このトラバースには気を使った。ひょっとしたらもっと歩きやすい道があるのかもしれないが、なんせ踏み跡が多いので稜線の方向に進む道を選択して進む。残置されたフィックスがある部分を通過したので、多分巻き道としては正解だったのではと思う。

Ⅱ峰は岩頭が耳みたいな形をしているので分かりやすく、そこを目がけて直登し、ほどなくⅡ峰(2,910m)に到着した。

Ⅱ峰が眼前に 岩頭が特徴的
懸垂地点に残置されたスリングやカラビナ

懸垂下降地点

ここⅡ峰では2ピッチの懸垂下降が必要で、残置スリングはしっかりしていたので残置カラビナも使って懸垂する。
50mロープで、ちょうど良い長さだった。傾斜がそれほどきつくないので、ロープをさばきながら懸垂。バックアップもあったほうが懸垂しやすいと思う。

懸垂テラスからⅡ峰を見上げる

懸垂が終わると明神岳主峰はすぐそこで、ガレた岩場を登っていく。
明神岳の頂上(2,931m)へ到着したが、あいにくのガスで眺望はなかった。

明神岳主峰 もう少し粘ったらガスが晴れたかも

一組限定 最高のテン場

とにかく疲れていたので、早くテントが張りたくて山頂から幕営敵地を探す。
すぐ下に、綺麗に整地された場所を発見、この日一番嬉しかった。なんと平坦かつ絶景な場所!

ここでようやく幕営。今回はニーモのTANI、このテントは軽くて雨にも強いのでチョイスは正解だった。
この日も多くの登山者が上高地から入山したにも関わらず、明神の主稜線に入って以来誰も会うことがなかったので、限定一組様だけの最高のテン泊を楽しむことができた。
フライを被せ終わった頃に雨が降り始めたので、天気にも恵まれた気がする。もう少し遅かったら雨具の出番だった。

雨後、前穂高が眼前に

その後、雨が降ったり止んだりを繰り返し、18時ごろに土砂降りに。雨音を聴きながら一本だけ持ち上がったビールで寛ぐ。雨でも下地も岩なのでテントが汚れることもなく、本当に快適なテン場だと思う。

翌朝、4時くらいまでは小雨が降っていたが、夜明け前に雨が上がり、外に出ると綺麗な朝焼けと前穂高が見事だった。

今回の山行は晴天ではなかったが、ガスと雲が多い天気ながら雲海が美しく、ピーカン以外の天気も良いものだと気付いた。

翌日はテントを撤収し、幕営地から前穂高を目指します。本来は吊り尾根から奥穂高、涸沢岳を経由して北穂高へ向かう予定だったが、持参したテントマットが空気漏れを起こし、寝るのがしんどく首のヘルニアが嫌な感じだったので、予定を一泊に変更し岳沢経由で下山することにした。

奥明神沢への下降路は懸垂で降りる人もいるようだが、傾斜がゆるく岩も飛び出しているのでロープ回収時にスタックさせてしまうかもしれないと判断し、フィックスロープを補助にクライムダウンした。結果、これで正解だったと思う、さほど難しくはなかった。

これまで歩いてきた明神岳の主稜線を眺める。テントを張っていたのは頂上下の大きな岩のあるところです。

さあ前穂高岳まで標高差210mの登り。
ガレガレの踏み跡、ここも迷い道を選別しながら登って、振り返ると晴れ間に明神岳の主峰とⅡ峰。
ここまでの道程で最高の絶景だった。

そこから少し登ると、一般登山道へ合流。というかもう前穂山頂の直下だった。

前穂高岳に到着

前穂高山頂には誰もおらずしばらく休憩することに。
山頂はやや雲が出ていたが、奥穂や北穂、ジャンダルムなども良く見えた。北穂への未練も残しながら、少し撮影などをしてから下山。
すると下からどんどん人が登ってくる、さすが土曜日、前穂高岳。紀美子平にもたくさんのザックと人が見えた。

ここから一般登山道の重太郎新道で岳沢に下る。下りだが急なので足にきているのがはっきり分かる。コロナで山行が減っているのもあるが、体力が落ちているのを自覚した。

岳沢小屋に到着。まだ10時前、ビールの誘惑に負けそうになったが、まだしばらく下山道を歩かないといけないので河童橋まで我慢。

途中で可愛らしい花と虫がいたので撮影。花は詳しくないのであまり撮らないのですが…。

11:00  岳沢登山口に到着。河童橋で早速ビールをプシュッといって、帰りのバスを手配。
かなり時間があるので、河童橋周辺でテントを乾かしながら、ビールをおかわり。
上高地から平湯へ移動して、ひらゆの森でお風呂に入って帰阪。

今回は目的だった明神岳の南西尾根から主稜を縦走でき、天気も雨をうまく避けられたので静かな山行を満喫できました。帰ってからすぐに筋肉痛になり、山歩きをサボっているということをあらためて実感した登山だった。

<コースタイム>

8月5日

上高地BT(5:45)−河童橋(5:50)-岳沢登山口(6:03)-No.7看板(6:32)-痩せ尾根(8:20)-Ⅴ峰台地(9:20)ーⅤ峰(9:55/休憩)-Ⅳ峰(11:45)-Ⅲ峰を巻く(12:00頃)-Ⅱ峰(12:31)-明神岳主峰 (13:15)−主峰下幕営地(13:30)

8月6日

主峰下幕営地(6:00)-前穂高岳(7:35)-紀美子平(8:05)-岳沢小屋(9:30)-岳沢登山口(11:00)−河童橋(11:15)